ごあいさつ
全国書教研連盟会長 安 藤 隆 弘
早くも十月、時の流れの早さにびっくりしています。
第三十八回全国書写書道展覧会を見届け、九月末で書研
の会長を退任させていただくことになりました。急に皆
様とお別れするのはとてもつらいですが私も年を重ね目
も悪くなり、先を考えると今がその時だと思いました。
次の会長には現副会長の村上美碩先生にお願いしたいと
思っております。村上先生はじめ書研には頼りになる立
派な先生方がたくさんいるので安心して退くことができ
ます。皆様もどうぞこれからも書研を守って頑張って下
さい。書研の為、そして日本の書写書道の為にお願いい
たします。これからは少し離れた所から書研の発展と皆
様のご活躍をお祈り申し上げます。代表の佐藤香玉先生、
諸先生方、大変お世話になりました。さいごに大きな声
で言いたい、「本当に楽しかった。ありがとう‼」
安藤隆弘(あんどう たかひろ)
大正十五年生まれ
学歴
京城師範学校予科五年終了
長野師範学校卒業
東洋大学文学部二部国文科卒業
職歴
公立学校教員(長野県・東京都)
文部省大臣官房専門職員
川村女子大学教授
柏シルバー大学院講師
全国書教研連盟 会長
条幅作品の解説
阿 保 幽 谷
○作品―徐引清風納涼(六字)
○読み方―徐(おもむろ)に清風を引いて涼を納(い)る。
○書体―楷書(九成宮醴泉銘のように)
○意味―心を静かにして清らかな風を招き入れて涼をとる。
○学び方
●心構え―清らかな風を入れて涼しさを味わうということは、心が落ちついて静かでな
いとうまく味わない。
反対に心に落ち着きのない人は、いざという時に汗ばかりかいて暑い暑いと思う。
どんな時でも心の落ち着かないときというものは、物事がうまくいかないものである。
また、心を落ち着けようと思っても、うまくいかないことが多い。これが人間の現実
である。だから心を落ち着けるように努力をすればよいということになる。
心が落ち着いていると、身も心も涼しく感じられる。そういう気持ちでこの文字を書
いてみたい。
●全体のまとめ方―楷書で一字一字を力強くしっかりと書く。したがって中心をしっかりととると全体がうまくまとまる。文字の大きさも大体同じような大きさで、九成宮
醴泉銘のすっきりとした書き方をすればよくまとまる。
●字形のとり方―一字一字は大体たて長の形で書くとすっきりする。ひきしまった文字なのでたての線は背勢にするとこのような形になる。
●用筆法―起筆、終筆はしっかりと押さえる。
はねは短く、払いはすっきりろ長くする。とくに折れの転折はするどい。
●墨つぎは、特にこれといって考えない。墨つぎを考えるとしたら、墨液がなくなった
らつけるとよい。
楷書は、線の方向をまちがえるとおかしくなるので線の方向をしっかりと書く。
書く前には、よく手本を見て書くようにすると手本のようになる。
(名跡墨場必携 二〇六頁参照 阿保直彦編・木耳社) |