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 先生からの言葉(巻頭言



「日本文字」を伝えよう
全国書教研連盟会長
安 藤 隆 弘


 三月弥生、春寒もようやく緩むころとなり桃の節句の月です。
今月は、*『千禄字書』別名『千禄字様』からです。
 従来は楷書の字書として扱われてきたことが、内容か らすると「字書」というよりも「字様」(類似の混同され やすい漢字を弁別するために編纂された書籍)の一種と 考えるのが妥当のようです。成立は顔元孫の撰による中 唐の七一〇〜二〇年頃とされ、七七四年に顔真卿が書写 し、類似の文字を「俗」「通」「正」と分類して規範を示し ています。
 「俗体」とは浅近な字体で戸籍簿・文章の草案・手形・ 薬の処方に用いてよい字体。  「通体」とは、長い年月にわたって習慣的に行われてき た字体で、上奏文・報告文・手紙・判決文に用いてよい 字体
 「正体」とは、拠り所があって、著述・文章・官吏登用 試験・石碑に用いる字体。  なお「千禄」とは「禄を千(もとめ)る」の意味で、官 吏登用試験(科挙)に合格するための参考書でありました。
 *『字彙』  筆者旧蔵のものは「寛文二年 京都忠興堂本」の和刻 一四巻本でした。すでに昭和六一年「書学」誌上に連載 を終え、その必要も無いと考え七五歳の退職を機に他の 書籍類と共に処分をしました。ところが今回の著述問題 が生じ、発表済みの資料ではどうしても不十分でした。 そういう状況の中で、隔月に古書会館から送られてくる 「古書通信」に「字彙(全揃)大版刷 全一五冊 二万円」 とありました。その当座はパンフレットを横目にしてい ました。しかし、売りたて期日を過ぎた頃、必要感が首 をもたげ掲載の古書店に問い合わせ、即答は得られなか ったが探して送本ということになりました。改めて『字 彙』の解説をみると「一二巻 巻首・巻尾各一巻」とあ り、計一四巻がその編成でありました。来月はより深く 進んで行きます。  

条幅作品の解説
阿 保 幽 谷

○作品 洗 眼 看 輕 薄 虚 懐 任 屈 伸
○読み方 ― 眼を洗うて軽薄(けいはく)を看(み)、懐(こころ)を虚(むな)しくして屈伸 (くっしん)に任(まか)す。
○意味 ― 眼をよく洗い清めて誠意のないこと(軽薄)を見きわめ、心をからっぽにして、  変化(屈伸―のびたり、ちぢんだりすること)に打ちまかせる。   すなわち、よく目を見開いて良いか悪いかの区別をつかみ、心を落着けて(無心な  状態で)世の中のいろいろな出来事をしっかりつかんで負けないようにすること。
○書体 ― 行書体 
○学び方
 ●心構え―書道は芸術としての美しさを求めるものであるが、本当の美しさは技術と  精神性が一つになってはじめて書が生かされるのではないかと思う。   したがって、よいことばを選び、そのことばを生かすように技術を学んでいくとよ  い。ことばの意味は書道にとって大切な要素を持っている。
 ●全体のまとめ方―文字は十字で二行に書く。こういう場合、一行目の文字の数を二  行目より少し多い方がよい。したがって一行目は六文字、二行目は四文字にし、二行  目の終わりに署名する。
  中心と余白と文字の大きさの変化に気をつける。
 ●字形のとり方―文字の大きさは大きく分けて三種類ある。大、普通、小である。書の大切なことは、変化と統一であるから、変化をつけて、どのようにバランスを保つかである。この意味で、文字に大小の変化をつけ、バランスを保つように工夫する。  もし、変化をつけないとあきてしまう。
  大、中、小も同じようにしない。特に隣は違った方がよい。
 ●用筆法―線も変化をつけると筆力が出る。起筆、送筆、終筆の変化、速さ、方向、  筆圧の変化を工夫して書くとよい。
 


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