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 先生からの言葉(巻頭言



肉筆ならではの自己表現を・・・
全国書教研連盟会長  村上美碩

 梅雨明けの知らせとともに、夏の光が一段とまぶしさ を増す七月。
 青空に浮かぶ入道雲や、夕暮れに響く蝉の声に、季節 の躍動を感じる頃となりました。私たちの暮らしの中で は、自然の移ろいとともに心も体も整える大切な時期だ と思います。
 書写書道も、ただ文字を美しく書く技術だけではなく、 硯に墨を磨り、紙に向かう瞬間、慌ただしい日常の音は 遠のき、心の内側に静かな風が吹き始めます。一画一画 には、その日の気持ちや姿勢、呼吸までもが映し出され ます。同じ文字を書いても、昨日と今日では異なる表情 になるところに、奥深さが心や体を整えるのではないで しょうか。
 七月は、一年の折り返しを迎える月でもあります。新 年に抱いた目標や思いを、あらためて見つめ直す良い機 会です。うまく進んだこともあれば、思うようにいかな かったこともあるでしょう。しかし、書写書道の稽古と 同じように、積み重ねることで道は開けていきます。そ して自分自身の歩みを続けることだと思います。
 夏は挑戦の季節でもあります。第四十回書写書道展覧 会の締切がせまってきましたが、まだまだ間に合います。 また、一般生涯の皆さんにとっては、競書、学生の皆さ んは、自由研究など、新たな作品に取り組む機会が増え る時期です。思い切って大きな紙に向かったり、のびや かな線を表現してみてください。失敗を恐れず筆を運ぶ ことで、これまで気づかなかった自分の可能性に出会え ることでしょう。
 古来、日本人は文字に心を託してきました。暑中見舞 いの葉書や短冊に記す願いの言葉にも、人を思う温かさ が宿ります。便利な時代だからこそ、手書きの文字が持 つ力はより一層輝きを増しているように感じます。
 この夏も、一筆一筆を大切にしながら、書とともに豊 かな時間を重ねていきましょう。筆の先に広がる世界が、 皆さまに新たな感動と成長をもたらす七月となることを 願っております。


条幅作品の解説
阿 保 幽 谷

竹 聲 松 影
○書体―行書
○読み方―竹 聲 松 影
○意味―風が吹いて竹が響き、月がてらす松の影という春の様子
○作者―許 斐  架 染 梨
○全体の書き方
 ● 文字の長短―「聲」と「影」を長く、「竹」と「松」を四角形に。
 ● 中心―そろえる。   ・署名―小さく、真中の上から書く。
 ● 墨つぎ―「竹」と「松」の二ヶ所
 ● 文字の書き方
  ・四つとも、文字は大体同じ余白をとる。
  ・文字の大きさ―「竹」と「松」を同じにし、「聲」と「影」をたて長にする。
  ・署名は小さく。
  ・文字は、はなれているが、つながるように。
 ● 線の書き方
  ・線と線はつながるようにして放つ。線がつながると、文字と文字とがつながり、作品全体がつながっていく。
  ・遠近感―墨つぎが大切である。墨の濃いところは近くに見え、遠いところはかすれて見える。書道は墨一色で遠近感を出す。これが大切である。
  ・署名―署名も作品全体として見ていくから、「影」が書き終っても、そのまゝの筆で署名を書いていく。次第にかすれていくが、これが大切になってくる。
  ・筆―筆は、半紙を書く時の筆でも大筆を用いる。半分以上おりていないと書けない。
  ・墨の濃さ―濃墨を用い、濃い墨の方がかすれがよく出る。
  ・木文と署名との関係―一行目の本文は右上となり、署名は印を押しても一行目より上で終わるように工夫することが大切である。二行目に印を押した時、一行目より下にくると、署名の位置が悪い。そのように空間がとれない徳は、用紙の半分の上から書けば署名も印も押せる。印を押し間違えるとせっかくの作品が大なしになるので気をつけたい。

 


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