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先生からの言葉
先生からの言葉(
巻頭言
)
「日本文字」を伝えよう
全国書教研連盟会長
安 藤 隆 弘
三月弥生 美しい言葉の中、節句とか卒業とかいろい ろいそがしい月が始まります。木々や虫たちも「春眠暁 を覚えず」なんていってられません。
○西アジア『文字禍』(中島敦全集 第一巻 筑摩書 房刊昭和二四年再版)より その書き出しは(引用は現 代表記)「文字の霊などというものが、一体、あるもの か、どうか。」に始まり、その最終末は「数百枚の重い 粘土板が、文字共の凄まじい呪の声と共に此の讒謗者の 上に落ちかかり、彼は無慙にも圧死した。」と締めくく られてある。その梗概は・・・
大王は、図書館の闇の中でひそひそ話の正体は文字の 精霊ではないのかと、老博士にその探索を命じた。博士 は日夜その図書館に通い万巻の書に目をさらし研鑽に励 んだ。その図書館は、博士の研鑽に励んだ二〇〇年後に 地中に埋没し、さらにその二三〇〇年後に偶然発掘され たものである。エジプトではパピルスに記録していたが、 メソポタミヤ地方では粘土板に楔形の符号を彫り付けて いた。図書館では万巻の粘土板を所蔵していたのである。
博士は粘土板の凝視と静観によって、ばらばらになっ た点や線の集まりが意味と音を持たせるのが、文字の霊 であることを悟った。そこで博士は人々に文字を覚える 前と後との変化を聞いた。「文字の害たる、人間の頭脳を 犯し、精神を麻痺せしむるに至って、すなわち極まる。」 と書かねばならなかった。「歴史とは昔あった事柄で、 且つ粘土板に昔あった事柄で、且つ粘土板に記されたも のである。」数日後大地震によって、数百枚の重い粘土 板が文字共くずれたそうである。
もうすぐ春がやって来ます、桜の花もいつでも咲きそ うで、前に進んで、止まってくれません。体をきたえ、 うち勝てるように準備していきましょう。
条幅作品の解説
阿 保 幽 谷
○作品―四時無形
○読み方―しじ むけい
○意味―いつも形というものは無い。
○大意―いつも形というものはあると思ってはいけない。特に書道は「変化と調和」 が大切である。いろいろな形をつくり、調和を保つことが大切である。
○作品の学び方
● 書体―行書で「王羲之」の「王右軍聖教序」から文字をとった。
● 文字―画仙紙に一行四文字。
● 筆―半紙を書く毛筆を用いた。
● 全体のまとめ方
・文字の中心―中心はそろえて書く。
・余白―天地、左右は大体同じようにあける。
・文字と用紙とのつりあい―画仙紙に文字が入るように、文字の大きさを考える。 文字と文字との間は大体同じ。
・墨つぎ―毛筆に墨をつけ、「四」「時」「無」と続けて書き、「形」で墨をつけて 変化を出した。
・署名―小さく、真中より下に書く。
● 文字の書き方
・「四」は横長、「時」は大体四角、「無」は横長、「形」は正方形というように変 化をつける。
・行書であるから線と線がつづいて書けるように、また、文字と文字とのつなが りを考える。特に行書であるということを忘れないこと。
● 線の書き方 天は、はじめの横画を太く長く書く。それでいて、最後の点は右下へ少し離して 書き、バランスを保つようにした。
・「四」の始筆は、「左平線」(左から筆が入るように書く。)両側を太く、よこ画 は細い。この変化が大切である。
・「時」は、二画目のたて画と、六画目のたて 画は太く、あとは細い。「無」は墨がなくなったがそのまま書く。特に四画目の横 画は長く、他はせまい。こうすると形(スタイル)がよい。「形」は、それぞれに 方向に変化をつけ、全体の調和を保つ。そして、ここで墨をつけ、太めに書く。
(王右軍聖教序 2頁)
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