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 先生からの言葉(巻頭言



「日本文字」を伝えよう
全国書教研連盟会長
安 藤 隆 弘


 清涼の候 今年の炎暑もようやく勢いがおとろえたよ うにおぼえます。三十七回展は、昨年に比べ皆さんの実 力が高くなり、今から楽しみです。さて◎女文字(女書)  楷書が成立した以後、漢字と平行してある地方で女性 のみに通用されていた文字。
『中国の女文字〔伝承する女性たち〕』(遠藤織枝著  三一書房 平成八年)を資料とし叙述を進める。発生  楷書成立以後、古くは唐代、少なくとも四〜五百年はさ かのぼることが出来る。地域 湖南省江永県の南端、二 五か村。(未解放地域)
 名称 この地方では、漢字は男性専用だったので「男 書」、女性用の文字を「女書」と称している。女性は漢 字を学習できなかったのでその読み書きは出来なかった。 同校教育を受けられるようになったので女性も漢字の読 み書きが出来るようになった。
 文字学から見た特徴
※江永地方の土話の二〇〇ぐらいの音節を全部表記でき るだけの整った体系の音節文字。
※漢字との類似
 ①漢字の形を斜めにしたもの。簡体字の変形もある。
 ②少し変形してあるが、見れば読めるもの約一五〇字。
 ③借用の痕跡はあるが、変異が大きいもの約二〇〇字。
※表音文字としての特性 造字構成部分や単字に表意機 能が無い。※女性の文字であること 従来の女性の仕事 と密接につながっている ○先行論文 木幡敏行「女書 をめぐる若干の問題について」『文化言語学ーその提言 と建設ー』三省堂 一九九二年
   日本中激暑だった夏がやっと九月になりました。心を 落ち着けて見まわし、一歩一歩前進して下さい。


条幅作品の解説
阿 保 幽 谷

「鐘 聲 烟 外 寺、燈 火 樹 間 家」
○書体―行書体
○文字数―10字
○読み方―鐘声、烟外の寺、燈火、樹間の家
○意味―鐘の音が、もやの向こうの寺から聞かれ、ともしびが木の間の家からもれ光る。
○学び方
 ● 心構え―鐘の音が遠くの方から聞こえてくる。その時は、あたりが暗くなり、どの  家でもあかりをつける。そのあかりが木の間からかすかに見えるといった風景を述べ  た詩である。
  鐘の音も、ともしびもはっきりしないところに、一日の夕暮れがほのかに見える。  ちょっとさびしい情景である。そんな時、人間は何を考えるであろう。一日の仕事が  終った安心感と、何かさびしさを想像させる。いかにも一日の終りをつげるようだ。  そういう情景を思いだし乍らこの文字を書くとよい。
 ● 全体のまとめ方―1 0字を半切の画仙紙にまとめるためには、やはり2行に書くとよ  い。一行目は7文字、二行目は3文字のため、二行目はあきすぎる。そこで、二行目  へこの詩を作った「館柳湾詩句」ということばを書き、その下へ署名を入れた。この  時、本文より、詩を作った人のことばを少し小さく、署名は、さらに少し小さく書く。  しかも、本文と詩句と署名の間を少しあけるとよい。
  墨つぎは、2か所で「鐘」と「寺」である。墨色は余り濃くない。  行の中心はそろえるとよい。
 ● 文字の形―文字の形は、大小の変化をつける。そして、文字がつづいていくように  する。
 ● 用筆法―線の折れるところは、すぐにはね返るようにすると筆力が出る。また、墨  をつけたところは太く、にじむように書き、かすれてきたら、改めて墨をつけ直すよ  うにする。長い線があったら、他は短くするようにするとバランスがよい。  
 


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