| 「さあ スタート!」
全国書教研連盟会長 村上美碩
四月、始まりの風と共に。さくらはほころび、やわら
かな陽光がふりそそぎます。新しい学年や職場、新たな
出会いが私たちを待っている期待と同時に、少しの不安
も胸に宿る季節ですが、その揺れる心こそが前へ進もう
とする力のエネルギーになります。
書写書道は、白い紙に最初の一画にふれるところから
始まります。その一画には、ためらいも決意も、その日
の呼吸も映し出されます。筆をととのえ、墨をすり、静
かに心を澄ませるとき、私たちは自分自身と向き合って
います。形を整えることは、心を整えること。点画の強
弱や余白の広がりは、そのまま生き方の縮図ともいえる
でしょう。
新しい門出にあたり、どうか一点一画を大切に書いて
ください。上手さを急ぐよりも、今この瞬間の気持ちを
誠実にのせることが、作品に深い息づかいを与えます。
失敗を恐れず、何度でも書き直す勇気を持ちましょう。
重ねた半紙の枚数だけ、確かな歩みが刻まれていきます。
春の光のようにのびやかに、若葉のようにしなやかに。
四月の清新な気配を胸に、今日も机に向かいましょう。
筆先から生まれる一線が、皆さんの未来を明るく照らす
ことを願っています。
条幅作品の解説
阿 保 幽 谷
○ 作品―畳 雲 長 風(行書)
○ 読み方―じょううんちょうふう
○ 意味―幾重にも重なった雲が遠くから吹いてくる風ということで、夏のようすをあらわしたものである。夏は、暑い。暑いと涼しさがほしくなる。こういう時に雨雲が風にのって移動してくると気持ちがいい。暑い時のは涼しさがほしい。寒い時には暑さがほしい。これが世の中の姿である。要は、バランスよく、調和が保たれると自然のようすにしても、人間の生き方にとっても大切なことである。
○ 学び方
● 心構え―暑い時には涼しくなる雨雲がやってくるとうれしい。この涼しさを求めて作品を書いていくとよい。
● 全体のまとめ方―四文字をたっぷりと筆に墨水を含ませながら、中心をとりながら文字の大きさと余白のとり方に注意して書くとよい。線の太い細いの変化をつけていることに注意すると共に、文字と文字のつながりに気をつけるとよい。
● 字形のとり方―「畳」は、たて長で力づよく、うかんむりの横線を長くする。
「雲」は、雨かんむりの横の線を長く、あとは思い切って幅狭く変化をつけるとよい。「長」は、一画目を長く、太くて少し小さめでまとめる。「風」は、たての線と線との間を狭く、たての線は思いっきり長く書くとよい。そして気持ちを大きくもって書く。
● 線の書き方(用筆・運筆) ―線は、長い線と短い線をよくみて書くとよい。また、太い線と細い線を区別してとらえ、線がつながっていくようにする。特に、線が折れたり、はね返る時は、鋒先を少し紙に食い込むように筆圧を加え、いっきに書くようにするとよい。そのためには、一つ一つの線を見ながら書くのではなく、文字として流れるように書きたい。そのためには、語句をおぼえ、筆づかいをおぼえ、いっきに書くと筆力が出て生きた書が書ける。
|